観る前は「どうせ大学生の冴えないラブコメだろう」と完全に高を括っていた。だが、第一話の高速で捲し立てられる台詞回しに圧倒され、気がつけば作品が構築する「四畳半の深淵」へと完全に引きずり込まれていた。この作品の凄みは、主人公が「バラ色のキャンパスライフ」を夢見て何度も繰り返す泥沼のループにある。サークルを変え、趣味を変え、恋人を変えても、結局は同じ場所に辿り着く。その絶望的で滑稽なまでの無力さが、観ている側の「もしあの時別の道を選んでいたら」という、誰しもが抱える残酷な記憶を強烈に刺激してくるのだ。

特筆すべきは、湯浅政明監督による過剰なまでにシュールな映像表現だ。現実と妄想が混ざり合い、視界が歪むような感覚は、まるで脳内に直接万華鏡を流し込まれているかのような快感に近い。後半、並行世界が収束していく過程で語られるメッセージには、正直打ちのめされた。「今の自分にないものを求めるな。今ある現状の中にこそ、唯一無二の可能性が詰まっているのだ」という真理を、ここまでスタイリッシュかつエモーショナルに突きつけられるとは。エンドロールが終わった後、自分の冴えない日常が、途端に輝かしい冒険の始まりのように思えてくる。全大学生必修科目にするべきだし、かつて大学生だった全ての大人にこそ、この「人生の遠回り」の美しさを味わってほしい。一度観始めると、止め時を見失う。まさに観る劇薬だ。