最初は「魔王を倒した後のエルフの旅路」という、王道ファンタジーの温かい余韻を楽しむだけの作品だと思っていた。しかし、読み進めるうちに喉の奥がヒリつくような違和感に襲われる。フリーレンという存在は、私たち人間にとっての「一生」を、ただの「瞬き」として処理していくからだ。彼女にとっては数十年なんて誤差みたいなものなのに、私たちはその誤差の中で必死に生きて、老いて、消えていく。そのあまりにも巨大なスケールの対比に、自分の抱えている悩みや日常が、まるで風に舞う塵のように小さく感じられて震えが止まらなくなった。
特筆すべきは、彼女がかつての仲間を想う時の描写だ。死んだはずの仲間たちの言葉や行動が、長い時を経てフリーレンの行動を突き動かす。この「死者からのバトン」が、読者の私たちに「今、誰とどう過ごしているか?」という究極の問いを突きつけてくる。ただの冒険譚だと思って読み始めたら、いつの間にか自分の人生の残り時間を逆算させられ、深夜のベッドで天井を見上げて涙を流すことになった。過去への郷愁と、これから来るはずの喪失。それら全てを「感情の断捨離」ではなく「記憶の継承」として昇華させる手腕には脱帽するしかない。この作品に触れた後では、道端に咲く名もなき花を見る目さえ変わってしまう。あまりにも静かで、あまりにも暴力的な傑作に出会ってしまった。
最初はのんびりした旅だと思ってたのにいつの間にか涙腺崩壊してた