暇つぶしにでもやるか、と軽い気持ちで『Outer Wilds』を起動したあの日の自分をぶん殴りに行きたい。最初はただの、ちっぽけな宇宙探査機で太陽系を飛び回るのんびりしたゲームだと思っていた。着陸の操作は難しいし、すぐ死ぬし、何がしたいのかもよく分からなかった。だが、22分という制限時間の中で繰り返されるループの果てに、この宇宙に隠された「真実」がパズルのピースのようにカチリと音を立てて組み合わさった瞬間、背筋が凍るような戦慄が全身を駆け巡ったんだ。
このゲームは単なるSFアドベンチャーじゃない。失われた文明の残した旋律を追い、なぜ星が滅びるのか、なぜ我々はここにいるのかという問いの答えを、自分自身の「発見」によって導き出させる、極めて悪魔的で、そして圧倒的な体験装置だ。誰かに教えられるのではなく、自ら仮説を立て、死に物狂いで検証し、真実に辿り着く。そのプロセスがあまりにも強烈すぎて、クリアした後、現実世界の物理法則すらも「観測」の結果に過ぎないんじゃないかという疑念に苛まれるようになった。
焚き火を囲んで奏でるバンジョーの音色、暗闇に光る量子的な揺らぎ、そして終わりゆく宇宙の静寂。全ての要素が「知ること」の喜びと恐怖を同時に突きつけてくる。プレイを終えた今、自分の人生という小さなループの価値観すら変容してしまった気がする。宇宙の広大さと、そこに漂う自分という存在の儚さをこれほどまでに美しく、そして残酷に表現した作品を私は他に知らない。もし未プレイの人間がいるなら、頼むから攻略情報を見ずに、その汚れていない真っ白な好奇心を抱えたまま宇宙へ飛び出してくれ。それは人生で一度しか味わえない、最高で最悪の贅沢なんだから。