最初は「なんだ、この緩そうなタクシー運転手の日常話か」と油断していた。可愛い動物キャラがのんびりと会話するだけの、疲れた夜に摂取する癒やし枠だと完全にナメていた。だが、数話進んだ瞬間に背筋が凍るような違和感が脳髄を突き刺す。会話の中に散りばめられた無数の伏線が、まるで蜘蛛の巣のように視聴者の意識を絡め取り、出口のない迷宮へと引きずり込んでいくあの感覚は、他のアニメでは絶対に味わえない。

物語が進むにつれて、登場人物たちの何気ない一言が、実は巨大な犯罪の歯車の一部だったと気づいた時の戦慄と言ったらもう。特に小戸川が乗客と交わすやり取りは、まるで観客と心理戦をしているかのような錯覚に陥る。日常という仮面の下に隠された「誰かの不幸」や「歪んだ承認欲求」、そして「取り返しのつかない過去」。それらが最終回に向けて怒涛の勢いで一点に収束していく様は、まさに筆舌に尽くしがたい体験だ。

今では街でタクシーを見かけるたびに、運転手は誰なのか、後部座席にはどんな秘密が乗っているのかと勘繰ってしまう「深読み病」が完全に定着してしまった。日常会話の何気ない間(ま)にすら、誰かの抱える嘘が隠れているのではないかと疑う心。こんなにも平穏な世界を、これほどまでにスリリングなサスペンスへと変貌させる脚本の切れ味には、もはや感謝を超えて畏怖を感じる。まだ見ていない奴がいたら、人生を損していると断言できる。この毒気に、一度どっぷりと浸かってみろ。