最初はただの底辺デビルハンターが相棒のポチタと共に悪魔を狩る、バイオレンスで痛快なアクション作品だとタカを括っていた。だが、読み進めるうちにそれは大きな間違いだったことに気づかされる。この作品の真骨頂は、日常と非日常の境界線が紙一枚ほど薄いところにある。主人公の圧倒的な衝動と、それを囲む大人たちの冷徹で歪んだ愛情、そして何より作者の藤本タツキが仕掛ける独特の「映画的演出」が、読者の脳内に直接ビジュアルの劇薬を流し込んでくるのだ。

物語が進むにつれて、キャラクターの死が単なる展開の一つではなく、読者の心に楔を打ち込むような決定的な欠落として機能し始める。特に第1部の終盤、張り巡らされた伏線が一気に収束し、世界観が根底から覆される瞬間のカタルシスは異常の一言。読み終わった今、現実世界を見渡しても、どこか色が褪せて見えるような錯覚に陥る。ふとした瞬間に心臓の鼓動を聞くと、それが自分自身のものなのか、それとも胸に潜む相棒のノイズなのか判別できなくなる重度の依存状態に陥ってしまった。日常という平穏が、いつ崩壊してもおかしくないという緊張感が常に背中に張り付いているのだ。この「悪魔的な面白さ」に一度ハマれば最後、もう元の退屈な世界には戻れない。これぞ現代の狂気、これぞ令和のバイブルだ。