今更言うまでもないかもしれないが、完結から時間が経った今改めて『ゴールデンカムイ』を通読して、改めてその完璧さに膝を折った。冒険、歴史、グルメ、ギャグ、そして凄惨なバイオレンス。この相反する要素をこれほどまでに高次元で融合させた作品が、果たしてこの世に他に存在するだろうか。
まずキャラクターの造形が凄まじい。杉元やアシㇼパさんはもちろんのこと、登場する変態的なキャラクター一人ひとりに確固たる哲学と狂気があり、誰一人として物語の記号になっていない。彼らがアイヌの文化と北海道という過酷な大地を背景に、文字通り命を懸けて金塊を追い求める姿は、読んでいるこちらの生存本能まで揺さぶってくる。
特筆すべきは、物語の終盤にかけての収束力だ。あれほど広げた伏線やキャラクターの思惑が、最終的に雪解けの季節と共に一つに重なっていく様は、もはや神話的なカタルシスを感じる。野田サトル先生の「描きたいものを全力で描く」という執念がページから溢れ出ていて、読んでいる間はまさに脳が焼き付くような体験を味わえる。読み終えた後の、あの独特の喪失感と充足感が入り混じった感情……これを超える読書体験は、今後何年経ってもそうそう出会えないだろう。まさに歴史に残る大傑作、全人類の教養として棚に並べるべき一冊だ。