市川春子先生の『宝石の国』、ついに完結してしまったな……。読み終わった直後、PCの前で数分間ただただ放心してしまった。物語の序盤、ただキラキラと輝く宝石たちの日常を描いた物語だと思っていた自分を殴ってやりたい。宝石という、脆くて永遠に近い存在が、時間と虚無という名の猛毒に晒され続ける姿をこれほど残酷に、かつ神々しく描いた作品は他にないだろう。
特に主人公・フォスの変遷には、読んでいるこちら側の精神まで削られるような感覚があった。愛を求めて、あるいは許しを求めて、体を削り、記憶を捨て、人間という概念そのものに近づいていく過程。あの色彩感覚あふれる美しい画面の中で、行われていることはあまりにも無慈悲で哲学的だ。宗教的な救済の形なのか、それとも完全な断絶なのか。読者の解釈によって全く違う景色が見えてくるあの結末は、一種の芸術作品と言っても過言じゃない。読み終えた今、手元の単行本がなんだか眩しくて触れるのが怖いとすら思う。ここまで読み手の人生観に深く、静かに爪痕を残していく漫画は他にないだろう。まだ読んでない奴は、覚悟を決めて今すぐ全巻揃えろ。これは漫画を読んでいるというより、一つの魂の昇華に立ち会っている感覚に近いから。