全巻読み終えた今の心境を一言で言うなら「これこそが真のグルメ漫画の到達点」だ。冒険ファンタジーと料理、この全く噛み合わないはずの二つのジャンルを極限まで融合させ、なおかつキャラクターのバックボーンまで掘り下げきった九井諒子先生の手腕には脱帽するしかない。魔物を調理するというゲテモノ食い的な側面でキャッチーに釣っておきながら、物語の後半に進むにつれて見えてくるのは、生態系への敬意と「食べることは生きること」という圧倒的な哲学的テーマだ。
特筆すべきは、登場する魔物たちの生態設定がガチすぎて笑うレベルという点。単なるファンタジーの雑魚キャラではなく、そこに環境適応や進化のロジックを感じさせるからこそ、調理法が説得力を持って頭に入ってくる。「これ、現実の生き物でも応用できるのでは?」と思わせるほどのリアリティラインの高さは、他の追随を許さない。そして、何より食卓を囲む仲間たちの関係性が最高だ。派手な魔法合戦の裏側で、彼らがどれほど不器用に、しかし確実に絆を深めていくか。その過程が飯の描写とセットで描かれることで、読者はいつの間にか彼らの旅路を追体験している自分に気づくはずだ。この漫画を読んだ後だと、何気ない日常の食事さえも、どこか神秘的で愛おしい行為に思えてくるから不思議だ。人生で一度は読んでおかないと損をする、間違いなく歴史に残る傑作であることは疑いようがない。