今更だけど『Disco Elysium』という怪物を遊んでしまった。なんだこのゲームは。RPGという枠組みを借りて、プレイヤーの脳内にある「あまたの自己」と対話させるシステムが狂っている。主人公である泥酔警官の脳内には、論理、知覚、あるいは狂気そのものが人格を持って語りかけてくる。自分のステータスが上がれば上がるほど、脳内の声が饒舌になり、かえって真実から遠ざかるという皮肉。これぞゲームならではのナラティブ体験だ。

特筆すべきは、徹底的に描き込まれた「敗北の美学」である。世界を救う英雄譚ではない。ただ、自らの過去と、衰退する都市の淀みに向き合い、どうしようもない自分を抱えて明日を迎える。その過程で突きつけられる思想の断片がいちいち刺さる。テキストの質量と質が異常で、まるで一冊の極上の文学作品を読み終えたような喪失感がある。失敗さえも物語のスパイスにする寛容さと、突き放すような冷徹さが同居しているのだ。こんな贅沢な体験、一生のうちに何度も出会えるものじゃない。今夜もまた、脳内の「内なる声」に説得されて、酒場で一晩中考え込んでしまいそうだ。