全巻読了した今、自分の認識がどれほど甘かったかを思い知らされている。読み始めは、北海道の大自然で繰り広げられる狩猟とジビエ料理の丁寧な描写に「なるほど、美味しいものを食べる漫画か」と油断していた。しかし、物語のギアが一段上がった瞬間、そこはもう地獄と極楽が入り混じる黄金の戦場だ。金塊を巡る生存競争というメインテーマは、歴史的な背景やアイヌ文化への深い敬意を内包しながら、猛烈なスピードで読者を置き去りにする。何より恐ろしいのは、登場するキャラクター全員の「狂気」の解像度だ。一見するとシリアスな軍人や脱獄囚なのに、いざスイッチが入ると斜め上の変態性を遺憾なく発揮する。脱ぐ、食べる、戦う。この3つのサイクルの回転数が異常で、読んでいる間は自分の倫理観が崩壊していく心地よさすら覚える。笑った次のコマで泣き、泣いた次のコマで命のやり取りに震える。ここまで情緒の乱高下が激しい漫画は、他に類を見ないのではないか。歴史という重厚な土台の上に、極上のギャグと予測不能なサスペンスをこれでもかと盛り付けた本作は、まさに食いしん坊の魂を震わせる至高の一皿だ。読み終わった今、金塊などどうでもいい。ただ彼らともう一度、北の大地を駆け回りたいと願う自分がいる。この熱量は、一生忘れない。